◆年々増加、アライグマ被害 篠山で住民らNPO法人設立◆
■年々増え続けるアライグマによる被害。神戸市北区や三田市などと並んで被害が大きい篠山市で、狩猟経験のない一般住民が捕獲専門のNPO法人を設立し、本格的な駆除に乗り出した。活動に協力する兵庫県森林動物研究センター(丹波市青垣町沢野)によると、こうした試みは全国的にも珍しいといい、「対策の新モデル」として注目されている。(桑野博彰)
 同センターによると、アライグマは1998年ごろから神戸市を中心に、阪神、北播磨などで生息が確認された。農産物を食い荒らし、人家に侵入するなど被害は年々深刻に。県の2007年の調査では、農業被害は総額5340万円に上る。
 各市町は、アライグマを含む特定外来生物の輸入や飼育を禁じる「外来生物法」や県の防除指針に基づき、防除実施計画を策定。殺処分による駆除に努めているが、被害軽減には至っていない。

 篠山市大山地区では今年8月1日、NPO法人「大山捕獲隊」が発足した。西牧正美さん(63)を代表に地元有志14人が参加。メンバーは市が認める捕獲従事者の資格を持ち、ワナを使った捕獲や市への引き渡しを行う。
 大山地区は、スイカが特産品の山あいの小さな集落。アライグマによる被害が目立ち始めたのは5年ほど前だった。
 2010年、県森林動物研究センターが同地区で行ったアライグマの実態調査が、捕獲隊結成のきっかけになった。現地情報の提供などを通じてセンターの研究員と住民との間に交流が生まれ、西牧さんら有志の間に「駆除に向け、自分たちも何かしたい」という機運が高まった。
 翌11年には県の地域づくり事業を活用して活動費を獲得し、同センターと協力して本格的な捕獲作戦に乗り出した。

 アライグマが立ち寄りそうな水辺などに、エサを仕掛けた鉄製のワナ(縦横約30センチ、奥行き約80センチ)を設置。自動撮影カメラを集落の各所に置いて活動状況も把握する。さらに、センターが考案したワナの改良や製作も手掛ける。これまでに捕獲したアライグマは30頭以上。「タニシなどのエサになる生物が目に見えて増えてきた」。西牧さんは成果に胸を張る。
 活動を始めると、アライグマの出没状況などをめぐり集落間のコミュニケーションが盛んになった。隊員には西牧さんの幼なじみもおり、結束は強い。「将来はまちづくりを担う集まりに」と西牧さん。センターの横山真弓研究員は「同隊の活動は有害鳥獣に強い集落づくりのモデルになる」と期待している。
【アライグマ】北米原産の外来種。国内では1970年代以降、ペットとして大量に輸入され、捨てられるなどして野生化した。体長70センチ、体重10キロ以上の個体もおり、鋭い犬歯を持つ。繁殖力が強い上に感染症を媒介する恐れもあり、生態系への悪影響が懸念される。
 
神戸新聞 2012年10月3日‎
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